私が初めて楽器を買った話

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今からちょうど10年前、苦心の末お金を借り楽器を購入したお話です。

当時の私は大学に入学し、どんなサークルに入ろうか悩んでいました。 これはまでは中学・高校と運動系の部活動に所属していたため、サークルも運動系を中心に探していました。

そんな中、音楽活動をしているというサークルに偶然話しかけられました。

運動系以外は微塵も考えていませんでしたが、熱烈な勧誘を受けてしまい、その後すぐにあるという演奏会や飲み会に参加。そのまま半ば勢いに任せその音楽サークルに入ってしまいました。

私はマンドリンという楽器を演奏することになりましたが、音楽とは全くの無縁であったため、毎回新しいことをやる度に四苦八苦。初めのうちは譜面を読むことすらままなりませんでした。

ところが、未経験者・初心者OKを謳っていたということもあり、先輩の丁寧な指導のもと上達し、段々と楽器を演奏することが好きになっていきました。

しかし、この時の私はまだ肝心なことに気が付いていなかったのです・・・。 音楽サークルに入り半年が過ぎようとしたある日、私たち1年生は行き先不明のまま先輩に連れられ出かけることになりました。着いたのは都心の大きな楽器屋でした。 そこで先輩に言われたのが、「そろそろ自分の楽器を持とう!」ということでした。

確かにこれまではサークルにある貸出用の楽器で演奏していたため、そろそろ自分の楽器が欲しいという気持ちはありました。反面アルバイトもしていなかった私は、自分の財布との相談がありました。

しかし、次に先輩の発した言葉で私は一気に凍り付きました。 「うちのサークルはみんな30万円以上の楽器を買ってるんだ。だからみんなも最低でも30万円以上ね。」 周囲はざわめき、私の頭も真っ白になりました。

銀行の貯金を全て合わせても10万円ちょっと…とても買えるような状況ではありませんでした。幸いにも今すぐにという訳ではないようで、冬のイベントの前までには購入するようにとのことでした。 私は悩みました。短期間で30万円を自力で捻出することはまずできない。しかし、私だけ買わずしてサークルを続けるなんてことは許されないであろう。

悩んだ末、その日の夜に両親に交渉することにしました。 結果は聞く以前に予想済みでしたがノーでした。そもそも音楽サークルに入ると言った時も反対があったぐらいですから当然の結果でした。

言い分は、「どうせ飽きて辞めてしまうだろう」「実力もないのに高いものを買っても使いこなせないだろう」というものでした。軽く喧嘩にもなりましたが、それでも返事は変わりませんでした。

翌日、私は決心しました。実際に両親の前で演奏して自分がいかに真剣に音楽サークルの活動を続けたいかを証明するということを。

朝1限の授業が始める前にサークルの練習室へ通い、サークル活動終了後も練習室に残り黙々と練習をしました。 イベントの演奏と並行して練習しなければならず、初心者の私にとっては非常に大変なものでした。

1か月後。両親をリビングに招集し、自分がどれだけ本気でサークル活動をしているか、今後も続けたいのかを再び話しました。しかし、それでも以前と返事は変わりませんでした。

そこで私は最後の手段を取ることにしました。「今から演奏するからそこに座って待ってて」と言い、部屋から借りてきた楽器を持ち出しできました。 父親のあの時の間抜けな顔は今でも覚えています。 演奏した曲は両親の好きなサザンオールスターズのメドレー。決心したあの日からひたすら練習した譜面です。緊張もあり、少々うまく弾けなかった場面もありましたが、自分の中では上々の結果でした。

暫く沈黙があり、父親が「分かった」と一言。「今回だけは貸してやる」と言葉が続いたときは本当に嬉しくて涙が出そうになりました。 結果、両親から30万円を借りることができ、大学在学中の4年間、音楽サークルを続けることができました。

借りた後はすぐにバイトを始め、返済をしましたが、あの時貸してくれた両親には今でも感謝しています。